第18回 EMB勉強会「根面齲蝕の予防および進行抑制における効果的な処置方法について」

第18会 EBM勉強会「根面齲蝕の予防および進行抑制における効果的な処置方法について」

歯科衛生士の中田です。

根面齲蝕(こんめんうしょく)とは歯の付け根の部分(以下、根面とする)が虫歯になることです。虫歯になりやすい部分であり、予防方法として良い方法を検討するためにチームで文献を読みました。

読んだ文献

「Controlling caries in exposed root surfaces with silver diamine fluoride: A systematic review with meta-analysis.

フッ化ジアミン銀を用いて露出した根表面の齲蝕の抑制 メタアナリシスによるシステマティックレビュー」

Oliveira BH, et al. J Am Dent Assoc. 2018.

 

1)目的

成人の露出した根の表面における齲蝕の予防および阻止におけるフッ化ジアンミン銀(SDF)の効果を評価します。

 

2)方法

2人の査読者がそれぞれ、言語や出版日の制約のない8つの電子データベース、5つの進行中の試行記録、および参照リストを含めた、少なくとも12カ月間の追跡調査を行った対照臨床試験を独自に検索しました。

 

3)結果

著者らは2,356の特異的な記録を見つけ、研究者が無作為に895の高齢者を割り当てた3つの試験が含まれていました。すべての研究の研究者は、フッ化ジアンミン銀(SDF)とプラセボを比較しました。

1人の研究者は、38%SDFとクロルヘキシジンおよびフッ化ナトリウムバーニッシュを比較し、主要な効果測定値は、脱灰または充填された根面(DFRS)における加重平均差(WMD)およびSDFと対照群との間の齲蝕発生の平均差でした。

この研究では、ほとんどの領域でバイアスのリスクが低く、SDF適用はプラセボと比較して有意により良好な予防効果がありました。

健康な根面の齲蝕病変の予防において、クロルヘキシジンまたはフッ化ナトリウムバーニッシュと同じくらい効果的でした。

SDFはまた、プラセボより有意に高い齲蝕の進行抑制効果がありました。SDFによる齲蝕病変の黒色染色に関する不満は高齢者にはあまりありませんでした。

4)考察

高齢者の露出した根の表面への毎年の38%フッ化ジアンミン銀(SDF)の適用は、齲蝕の発生および進行を予防する簡易的で安価かつ効果的な方法でした。

 

今回の文献を読み進める中でフッ化ジアンミン銀はクロルヘキシジンまたはフッ化ナトリウムバーニッシュと比べて根面齲蝕の予防効果がより高いことがわかりました。

今回のEBM勉強会を通じて、根面齲蝕の予防方法を改めて検討する良い機会となりました。フッ化ジアンミン銀を使用するにあたり、黒く変色するという見た目の問題もあることから、患者さんのニーズに合わせて提案していけるよう、さらにその他の方法も検討しながら勉強を続けていきたいと思います。

 

第17回 EBM勉強会 「高濃度フッ化物使用後の口腔内フッ化物保持率について」

歯科衛生士の渥美です。

歯科医院でメンテナンスを受けると、最後にフッ素を塗られることがあるかと思います。

「フッ素を塗ったので、30分は飲食を控えてくださいね」と私たちは患者さんに伝えますが、

30分ではなく25分では効果がなくなってしまうのか?30分という根拠がどこにあるのだろうと疑問に思い、チームで文献を読み発表しました。

 

読んだ文献

「Fluoride Retentuion following the Professional Topical Application of 2% Neutral Soldium Fluoride Foam  2%中性フッ化ナトリウムフォームの専門的局所利用後のフッ化物保持」Int J dent2011; Jul7.

 

アブストラクト

目的

・専用トレーを用いて2%中性フッ化ナトリウム(NaF)フォームを使用して、専門的な局所適用を

するためのフッ化物の適切な量および口腔内のフッ化物の残留量を決定すること。

方法

・歯列調査モデルを用いて、NaF発泡体の適切な量を決定する。

・8人の成人被験者において、適切な量のNaF発泡体、専門的な局所適用後の唾液中の

フッ化物濃度、および専門的な局所適用後の口腔内の残留フッ化物の量を調べた。

 

結果

・適正量は、専用トレーを用いる場合トレー縁2mm下に充填することで全歯牙を覆うことが可能である。

・永久歯の場合、フッ化ナトリウムフォーム平均使用量は0.8g 同様にトレーを使用する場合のゲル量の1/5である。

・フッ化ナトリウムフォームを4分間使用した後の口腔内フッ化物残存率は使用されたフォーム量の25%である。

・唾液中フッ化物濃度は30分までの間に急激に低下。30分以降は徐々に低下する。

 

考察

・塗布後30分以内に唾液中フッ化物濃度は急激に低下しており、30分以降は徐々に低下し

ているため、30分以降であれば唾液中フッ化物濃度に大差はないと考える。

・ゲルと比較して修復物を傷めない、使用量が少ない=体内に取り込むフッ素量が少ないと

いう利点があるが、齲蝕予防という点でゲルと同様の効果をもたらすというEBMは未だない

た患者のカリエスリスクや修復物に応じて使用したほうがよいと考える。

今回の文献を読み進めるなかで、唾液中のフッ化物濃度は30分以内に急激に低下しており、

30分以降は徐々に低下していることから、30分以内に飲食をすると高濃度で作用しているフッ化物の効果が台無しになってしまうことがわかりました。

今回のEBM勉強会を通じて、フッ化物のフォームタイプとゲルタイプの違いを改めて理解する良い機会となりました。フォームとゲルでは使用方法や利点も異なるため、患者さんの虫歯リスクに応じて使い分けて提案していけるように、今後も勉強をしていきたいと思います。

iTOP Teacherコース in バンコク

歯科衛生士の芝野です。

先日、10/16~20までバンコクで行われたiTOPのTeacherコースに参加してきました。

2年前に東京でイントロダクトリー&アドバンスコースを受講させてもらい、ブラッシングの重要性や清掃用具の使い方を習得しましたが、

今回のTeacherコースでは、歯科医療従事者が患者に正確な情報とコーチングを高いレベルで提供することを目的としています。

そのために、コース内では歯科医療従事者が同じ職種の方にiTOP(個々にあわせた口腔の予防)の理念、正しい口腔ケアの方法や疾患のない健康な状態を長期間維持するための動機づけを指導できるようにトレーングを行います。

参加者はタイ、フィリピン、韓国、中国、日本などアジアの歯科医師、歯科衛生士、歯科業者の方25人程度でした。講師は、セルビアとオーストラリアの先生でした。

4日間の講義の中で午前中はiTOPの哲学や、歯周病・う蝕の理論的な講義があり、バイオフィルムが引き起こす歯牙や歯周組織への影響、歯間ブラシの有効性など改めてプラークコントロールの必要性を感じました。

午後は講師の歯科医師と参加者1:1でTouch to Teach(T2T)を実施しました。

ここでは、インストラクターとしての指導とテクニックのスキルをクラデン社の製品「CURAPROX」を使用して学びます。

実際に自分自身でCURAPROXの歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスを使用していたので使用方法は問題なかったのですが、今回はインストラクターとして人に教える立場なのでどのようにブラッシングの重要性を伝えるのか、正確なブラッシング指導を行うかが難しく課題となりました。しかし、相手に寄り添ってTouch to Teach(T2T)を行うことでどこから病気が引き起こされるのか、どこを磨かなければならないのか伝わりやすく、セルフケアの向上につながると実感しました。

日本の歯科界でも予防という概念が広まりつつありますが、患者を指導する歯科医療従事者自身が正しい知識や情報、口腔ケアの方法をもっと習得する必要があります。これからiTOPを通して口腔衛生教育を行い、患者さんの口腔内の健康増進に繋げられるように努めていきたいと思います。

第16回 EBM勉強会「唾液分泌量低下への対応について」

第16回 EBM勉強会

テーマ『唾液分泌量低下への対応について』

唾液の分泌は,年齢を重ねるごとに低下し,常用している薬が多いと副作用により減少する傾向にあり、 唾液の分泌が低下すると,口臭やう蝕,歯周病リスクが上がります。

口腔乾燥症を有する患者に出会った時、私たちは、口腔保湿剤の使用、キシリトールガムの摂取、咀嚼回数を増やすような食事指導、唾液腺マッサージなどを患者さんに提案していました。しかし、それらの方法は口腔乾燥を有する患者に対して本当に効果があるのか疑問に感じ、今回はガムの摂取に焦点に当て文献をチームで読み発表を行いました。

 

選んだ文献:『Interventions for the management of dry mouth: topical therapies

口渇の管理の為の介入:局所療法』

 

結果として1597人の参加者を含む36の無作為化比較試験が、包含基準に合致しました。 2つの試験は唾液覚醒剤とプラセボ、9つの試験は唾液代替物とプラセボ、5つの試験は唾液賦活剤と唾液代替物を比較し、18の試験は2つ以上の唾液代用品を直接比較した試験、2つの試験は2つ以上の唾液刺激剤を直接比較しました。

酸素化グリセロールトリエステル(OGT)唾液代替スプレーは、電解質スプレー(標準化平均差(SMD)0.77,95%信頼区間(CI)0.38〜1.15)と比較して有効性の証拠を示しました。統合された口腔ケアシステム(歯磨剤+ゲル+うがい薬)と口腔貯留装置の両方が有望な結果を示しているが、その使用を推奨するには現在のところ十分な証拠がありません。

チューインガムは残存能力を有する大部分の唾液産生の増加と関連しているが、ガムは唾液代替物よりも多かれ少なかれ有効であるという証拠はないという結果でした。

 

私たちの「口腔乾燥のある患者に対してガムの摂取は唾液分泌量が増えるのか」に対して疑問の答えは、チューインガムは唾液量産出には効果があるが,持続性が必要な口腔乾燥の改善には十分な根拠がないという結論になりました。

しかし、刺激唾液が増えることにより緩衝能が高まることを考えるとう蝕リスクが高い患者にはガムの摂取を積極的に促すべきであると感じました。

今回のEMB勉強会の感想として、コクランレビューの文献であり研究によって比較しているものやアウトカムの表現が異なり、十分理解してスライドにまとめるまでに時間がかかりました。発表時は、スタッフに伝わりやすいように文献に記載されている物質が配合されている保湿剤を紹介し、臨床で活用できるように提案することができました。

様々な患者さんが来院されるので、リスクに応じて患者さんに合った指導が今後もできるように日々勉強していきたいと思います。

メディカルビューティーアドバイザー講座 受講

医療法人社団ワンアンドオンリーの受付の岡部&村田です。

7月29日(日)に東京で行われました「メディカルビューティーアドバイザー講座3級」に参加してきました。

今回のセミナーは、クリニックにおける取り扱い商品の説明・使用方法について学んできました。

当日は雨も上がり暑い1日となりましたが14名の方が参加されていました。

  

特に当院でも販売している、貼るだけでカンタンしわ対策になるENDO SKIINの取り扱いに関しましては注意点がありましたので記載します。

ENDO SKIINは開封後10分以内に目的の部位(例:目尻のシワ等)に対して垂直に貼ってください。

「10分がポイント」です。

10分以上置いておきますと酸化が始まり、酸化したパッチを貼りますとヒアルロン酸効果が無いばかりか患部に炎症が出る場合があるそうです。

皆さん使用の際は気をつけて下さい。

今後もこのようなセミナーの情報を皆さんにご提供できればと思います。

商品についてのご質問はご気軽にお問合せください。

itopイントロダクトリーセミナーin東京

歯科衛生士の柿本です。

7/8(日)東京上野株式会社ヨシダにて、
iTOPイントロダクトリーセミナーを行ってきました。

これはメインテナンス患者さんに必須のブラッシングをお伝えするセミナーです。

当日は天候の悪い中、全国から19医院25名の方が参加していただきました。

ブラッシングと言えば歯科衛生士というイメージがあるかもしれませんが、ここのところ歯科医師の方の受講が増えています。
歯科が確実に予防にシフトしてきているのを感じます。

今年度は、9月9日東京、10月14日仙台、12月2日大阪と開催が決定しておりますので

是非ご参加ください。

CAMBRA診療フロー実践編 東京

麻生歯科クリニック 事務長の長谷川です。

先日東京で行われましたCAMBRA診療フロー実践編について報告します。当セミナーは、CAMBRAセミナーの基礎編、臨床編に参加された医院ですぐにでも実践するために臨床に即した形式で行われます。

主な内容は

CAMBRAの概要
初診時のにおけるリスク評価導入のポイント(受付応対)
模擬患者による医療面接シュミレーション
誤差のでにくいカリスクリーンの正確な取り扱い方法
代表的な症例をもとに治療計画の立案から提案方法

など、CAMBRAを取り入れた一連の診療を講義やデモを通して学んでいただきます。

今回参加された医院は、CAMBRAを検討している医院からすでに導入している医院と様々でしたが
アンケート結果を見ると満足度の高い内容だったのではないかと思います。

ただ、課題としてはカリスクリーンのやり方にばらつきがあったため、正しいやり方を習得するために、より導入しやすく分かりやすい講義に取り込んでいきたいと思います。

今後のキャンブラセミナーにつきましてはさらに2017年度全米CAMBRAcollitionからの内容をフィードバックし2018年の7月頃から開始する予定です。

またCAMBRA診療フロー実践編セミナーも全国開催することが決まりましたので、お近くの方は是非ご参加ください。当ブログでもCAMBRAの最新情報を随時アップしていきますので乞うご期待ください。

第12回EBM勉強会「乳酸菌の口腔内への有効性について」

私たちの診療スタイルは主に患者と歯科衛生士が一対一で接する中で診療を進めておりますので、患者からの質問や日頃の臨床における疑問も歯科医師監修のもと歯科衛生士自身で解決することが求められます。

そこで、当院では歯科衛生士を中心としたEBM勉強会を行っております。

目的は歯科衛生士一人一人が日々の臨床における疑問を文献を通じて解決できるようになることにあります。メディアやインターネットなどの情報社会の現代において信頼性がある情報なのかどうかを見抜く目を養うことは、非常に重要であり、結果として患者の口腔を健康に導くことに繋がると考えております。

本日のEBMセミナーは「乳酸菌の口腔内への有効性について」行いました


当院で行われているCAMBRAの医療面接の際に、患者さんの乳酸菌関連製品の使用状況が増加傾向にあると感じていました。そこで乳酸菌についての正しい知識の勉強をすべきだと思いこのテーマを選びました。

第12回EBM勉強会 ハンドアウト

論文の内容から、ある乳酸菌は齲蝕と歯周病のリスクを減少させるのに一定の効果がある事が分かりました。プロバイオティクスの研究は2000年以降から報告され始めていますがまだエビデンスレベルは高くはありません。
しかし効果については期待できる面もありそうですので当院でも今後導入を検討する余地はあると考えました。
これからも患者さんへ多くの情報提供できるよう日々アンテナをはり邁進していきます!

CAMBRA臨床編in大阪

先日CAMBRA臨床編が大阪で開催され、歯科医師の麻生と歯科衛生士の佐久間、小川の3名で講義及び実習をしてきました。

全国から60名ほどの歯科医師と歯科衛生士、歯科助手、受付の方に参加していただきました。

内容は麻生歯科クリニック、ASO KIDS DENTAL PARKで日々行っているカリエスリスクアセスメントの臨床において、どのようにCAMBRAを活用しているかを診療の流れに沿ってお話させていただきました。

CAMBRAは患者の口腔内のう蝕のなりやすさを把握するためのリスク評価のツールであり、その後の予防推奨処置が科学的根拠に基づき定められていることが特徴となります。そのため、CAMBRAを実施した患者は自分がどのリスクを持っていて、何を取り組めば良いのか明確に知ることができるので、とてもシンプルでわかりやすいという声が多く上がります。

また口腔内環境の変化とともに自らの健康管理上の問題を自分事化し、前向きに取り組む姿勢が見られ、歯科に対する健康観や関心度が高まります。一方的に予防的知識を提供するのではなく、患者自らが気づき、行動変容を促すことが予防歯科において特に重要であると考えます。

参加いただいた多くの歯科医院の方々が前向きに取り入れることを検討していたり、興味を持って聞きに来てくれていたことを大変嬉しく思います。セミナー終了後も残って積極的に質問してくださる歯科医師、歯科衛生士の方々もいて、有意義な時間を過ごすことができました。

今後もCAMBRAの魅力を少しでも多くの先生方に伝え、全国の歯科医院で実施し、患者の口腔を健康に導く手助けができたらと考えております。また麻生歯科で本気の予防歯科を実践したい、予防歯科を一緒に学んでいきたい、本気の衛生士の皆様との出会いを楽しみにしています!