第16回 EBM勉強会「唾液分泌量低下への対応について」

第16回 EBM勉強会

テーマ『唾液分泌量低下への対応について』

唾液の分泌は,年齢を重ねるごとに低下し,常用している薬が多いと副作用により減少する傾向にあり、 唾液の分泌が低下すると,口臭やう蝕,歯周病リスクが上がります。

口腔乾燥症を有する患者に出会った時、私たちは、口腔保湿剤の使用、キシリトールガムの摂取、咀嚼回数を増やすような食事指導、唾液腺マッサージなどを患者さんに提案していました。しかし、それらの方法は口腔乾燥を有する患者に対して本当に効果があるのか疑問に感じ、今回はガムの摂取に焦点に当て文献をチームで読み発表を行いました。

 

選んだ文献:『Interventions for the management of dry mouth: topical therapies

口渇の管理の為の介入:局所療法』

 

結果として1597人の参加者を含む36の無作為化比較試験が、包含基準に合致しました。 2つの試験は唾液覚醒剤とプラセボ、9つの試験は唾液代替物とプラセボ、5つの試験は唾液賦活剤と唾液代替物を比較し、18の試験は2つ以上の唾液代用品を直接比較した試験、2つの試験は2つ以上の唾液刺激剤を直接比較しました。

酸素化グリセロールトリエステル(OGT)唾液代替スプレーは、電解質スプレー(標準化平均差(SMD)0.77,95%信頼区間(CI)0.38〜1.15)と比較して有効性の証拠を示しました。統合された口腔ケアシステム(歯磨剤+ゲル+うがい薬)と口腔貯留装置の両方が有望な結果を示しているが、その使用を推奨するには現在のところ十分な証拠がありません。

チューインガムは残存能力を有する大部分の唾液産生の増加と関連しているが、ガムは唾液代替物よりも多かれ少なかれ有効であるという証拠はないという結果でした。

 

私たちの「口腔乾燥のある患者に対してガムの摂取は唾液分泌量が増えるのか」に対して疑問の答えは、チューインガムは唾液量産出には効果があるが,持続性が必要な口腔乾燥の改善には十分な根拠がないという結論になりました。

しかし、刺激唾液が増えることにより緩衝能が高まることを考えるとう蝕リスクが高い患者にはガムの摂取を積極的に促すべきであると感じました。

今回のEMB勉強会の感想として、コクランレビューの文献であり研究によって比較しているものやアウトカムの表現が異なり、十分理解してスライドにまとめるまでに時間がかかりました。発表時は、スタッフに伝わりやすいように文献に記載されている物質が配合されている保湿剤を紹介し、臨床で活用できるように提案することができました。

様々な患者さんが来院されるので、リスクに応じて患者さんに合った指導が今後もできるように日々勉強していきたいと思います。