第17回 EBM勉強会 「高濃度フッ化物使用後の口腔内フッ化物保持率について」

歯科衛生士の渥美です。

歯科医院でメンテナンスを受けると、最後にフッ素を塗られることがあるかと思います。

「フッ素を塗ったので、30分は飲食を控えてくださいね」と私たちは患者さんに伝えますが、

30分ではなく25分では効果がなくなってしまうのか?30分という根拠がどこにあるのだろうと疑問に思い、チームで文献を読み発表しました。

 

読んだ文献

「Fluoride Retentuion following the Professional Topical Application of 2% Neutral Soldium Fluoride Foam  2%中性フッ化ナトリウムフォームの専門的局所利用後のフッ化物保持」Int J dent2011; Jul7.

 

アブストラクト

目的

・専用トレーを用いて2%中性フッ化ナトリウム(NaF)フォームを使用して、専門的な局所適用を

するためのフッ化物の適切な量および口腔内のフッ化物の残留量を決定すること。

方法

・歯列調査モデルを用いて、NaF発泡体の適切な量を決定する。

・8人の成人被験者において、適切な量のNaF発泡体、専門的な局所適用後の唾液中の

フッ化物濃度、および専門的な局所適用後の口腔内の残留フッ化物の量を調べた。

 

結果

・適正量は、専用トレーを用いる場合トレー縁2mm下に充填することで全歯牙を覆うことが可能である。

・永久歯の場合、フッ化ナトリウムフォーム平均使用量は0.8g 同様にトレーを使用する場合のゲル量の1/5である。

・フッ化ナトリウムフォームを4分間使用した後の口腔内フッ化物残存率は使用されたフォーム量の25%である。

・唾液中フッ化物濃度は30分までの間に急激に低下。30分以降は徐々に低下する。

 

考察

・塗布後30分以内に唾液中フッ化物濃度は急激に低下しており、30分以降は徐々に低下し

ているため、30分以降であれば唾液中フッ化物濃度に大差はないと考える。

・ゲルと比較して修復物を傷めない、使用量が少ない=体内に取り込むフッ素量が少ないと

いう利点があるが、齲蝕予防という点でゲルと同様の効果をもたらすというEBMは未だない

た患者のカリエスリスクや修復物に応じて使用したほうがよいと考える。

今回の文献を読み進めるなかで、唾液中のフッ化物濃度は30分以内に急激に低下しており、

30分以降は徐々に低下していることから、30分以内に飲食をすると高濃度で作用しているフッ化物の効果が台無しになってしまうことがわかりました。

今回のEBM勉強会を通じて、フッ化物のフォームタイプとゲルタイプの違いを改めて理解する良い機会となりました。フォームとゲルでは使用方法や利点も異なるため、患者さんの虫歯リスクに応じて使い分けて提案していけるように、今後も勉強をしていきたいと思います。

iTOP Teacherコース in バンコク

歯科衛生士の芝野です。

先日、10/16~20までバンコクで行われたiTOPのTeacherコースに参加してきました。

2年前に東京でイントロダクトリー&アドバンスコースを受講させてもらい、ブラッシングの重要性や清掃用具の使い方を習得しましたが、

今回のTeacherコースでは、歯科医療従事者が患者に正確な情報とコーチングを高いレベルで提供することを目的としています。

そのために、コース内では歯科医療従事者が同じ職種の方にiTOP(個々にあわせた口腔の予防)の理念、正しい口腔ケアの方法や疾患のない健康な状態を長期間維持するための動機づけを指導できるようにトレーングを行います。

参加者はタイ、フィリピン、韓国、中国、日本などアジアの歯科医師、歯科衛生士、歯科業者の方25人程度でした。講師は、セルビアとオーストラリアの先生でした。

4日間の講義の中で午前中はiTOPの哲学や、歯周病・う蝕の理論的な講義があり、バイオフィルムが引き起こす歯牙や歯周組織への影響、歯間ブラシの有効性など改めてプラークコントロールの必要性を感じました。

午後は講師の歯科医師と参加者1:1でTouch to Teach(T2T)を実施しました。

ここでは、インストラクターとしての指導とテクニックのスキルをクラデン社の製品「CURAPROX」を使用して学びます。

実際に自分自身でCURAPROXの歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスを使用していたので使用方法は問題なかったのですが、今回はインストラクターとして人に教える立場なのでどのようにブラッシングの重要性を伝えるのか、正確なブラッシング指導を行うかが難しく課題となりました。しかし、相手に寄り添ってTouch to Teach(T2T)を行うことでどこから病気が引き起こされるのか、どこを磨かなければならないのか伝わりやすく、セルフケアの向上につながると実感しました。

日本の歯科界でも予防という概念が広まりつつありますが、患者を指導する歯科医療従事者自身が正しい知識や情報、口腔ケアの方法をもっと習得する必要があります。これからiTOPを通して口腔衛生教育を行い、患者さんの口腔内の健康増進に繋げられるように努めていきたいと思います。